駐妻生活にも慣れてきた頃、二人目の妊娠が発覚!
妊娠糖尿病の検査と治療について、日本とイギリスの違いに触れながら詳しく解説します。
妊娠糖尿病でイギリスで出産予定の方、日本で出産予定の方、糖の検査の前にどんな病気か調べておきたい方、なんとなく興味がある方も、読んでみてくださいね。
途中、数値がたくさんでてきますが、細かい値が必要ない方は読み飛ばしちゃってください。
妊娠糖尿病について
妊娠糖尿病(gestational diabetes mellitus:GDM)とは?
妊娠糖尿病とは、妊娠以前に糖尿病と診断された事がなく、
血糖値が高めだが糖尿病と診断するほどは高くないもの
妊娠中は、糖を処理するインスリンの働きがホルモンの影響で悪くなっているため、
妊娠していない時には問題なかった人も血糖値が高くなる可能性があります。
お母さんが高血糖の状態が続くと、
・羊水過多(羊水が多くなりすぎる)
・新生児低血糖(赤ちゃんが低血糖になる)
・新生児呼吸窮迫症候群(赤ちゃんが呼吸障害をおこす)
・胎児心肥大(赤ちゃんの心臓の筋肉が厚くなり、心臓の機能が低下する)
・妊娠高血圧症候群(血圧が上がり、母児ともに悪影響を及ぼす)
妊娠糖尿病の人は血糖値をコントロールする必要があります。
検査方法は?
日本では全員を対象に簡易的な検査でふるいにかけ、ひっかかった人に詳しい検査をしますが、
イギリスでは糖尿病のリスクが高い人のみに最初から詳しい検査をします。
日本では
・随時血糖(食事とのタイミングに関係ない血糖値)
妊娠中期である妊娠26週前後で
・随時血糖(食事とのタイミングに関係ない血糖値) か、
・50gGCT(グルコースチャレンジテスト)
のどちらか
を検査することが推奨されています。
50gGCT(glucose challenge test;糖負荷試験)とは、
ブドウ糖50g入りジュースを飲み、1時間後の血糖値を測る検査
これらの検査で、
・50gGCT 140mg/dl以上
の場合、「妊娠糖尿病の可能性がある」として、
さらに詳しい検査である75gOGTTが行われます。
75gOGTT(oral glucose tolerance test;経口糖負荷試験)とは、
空腹時にブドウ糖75g入りジュースを飲み、
飲む前、1時間後、2時間後の血糖値を測る検査
・1時間後 180mg/dl以上
・2時間後 153mg/dl以上
のどれか1つでも当てはまる場合、「妊娠糖尿病」と診断されます。
ただし、
空腹時血糖とHbA1cの検査で、「妊娠中の明らかな糖尿病」かどうかの診断されます。
妊娠中の明らかな糖尿病であった場合は、妊娠糖尿病よりも厳重な血糖のコントロールが必要になり、
目や腎臓などに影響が出ていないかのチェックが必要になります。
イギリスでは
イギリスでもアジア人は妊娠糖尿病のハイリスクとして検査対象です。
・血糖値
妊娠28週頃にリスクの高い人(アジア人含む)のみに
・75gOGTT
イギリスでの診断基準は日本と少し異なり、
・2時間後 7.8mmol/l (=140mg/dl)以上 (日本では153mg/dl以上)
日本で使われている[mg/dl]に単位を換算したい場合は、×18をしてください。
治療は?
逆に血糖値が低くなりすぎないようにも注意。
・運動療法
・血糖値を下げる薬
日本では
・食後2時間 120mg/dl以下
標準体型だと標準体重(身長(m)×身長(m)×22)×30+200 kcalの食事がすすめられ、160cmの人なら1900kcalくらいになります。
推奨されるエネルギーの食事をとり、1日に何度も血糖値を測って血糖値をコントロールするために、1週間ほど入院が必要になることもあります。
1回あたりの量を少なくする事で、食後の血糖値の上昇を抑えられます。

昼食なら、一部をおやつの時間帯に分けて食べてください。
普通の量の昼食を食べて、追加でおやつも食べちゃだめですよ!
それでも血糖値が高ければ、インスリンの注射が必要になります。
妊娠が進むにつれてインスリンはさらに働きにくくなるので、インスリンの量が増えていくことが多いです。
妊娠が終われば通常インスリンは不要になるので、心配しないでくださいね。
血糖が逆に低くなりすぎる、低血糖にも注意。
低血糖で気分が悪くなった時のためにビスケットを持ち歩くと安心です。
妊娠糖尿病は赤ちゃんの元気がなくなってしまう可能性があるので、「リスクの高い妊娠」として慎重に経過をみられ、NST(胎児心拍モニター)も必要に応じて検査されます。
イギリスでは
治療の中心は食事療法と運動療法で、
・食後に30分程度のウォーキング
が勧められ、日本同様、栄養士さんから栄養指導を受けます。
食事療法と運動療法でも血糖値が高い場合には、薬で血糖値を下げます。
血糖測定
便利なアプリ
イギリスでは血糖値をリモートでモニターしてくれる、GDm-Healthという無料のアプリがあります。
血糖値のデータがNHSに転送され、血糖値を見たmidwife(助産師さん)がSNSメッセージでアドバイスを送ってくれるそうです。

これは便利!
赤ちゃんの検査
通常妊娠12週と妊娠20週の2回しか超音波検査はしないイギリスですが、
妊娠糖尿病の場合は「リスクの高い妊娠」として、4週おきに赤ちゃんの成長と羊水量をチェックします。

月に1回もみてもらえる!
それでも日本よりもだいぶ少ないけどね…
出産の時は?
分娩の時期
日本では、分娩誘発で陣痛促進剤を使って、妊娠37週以降の早めの時期に分娩とする施設もありますが、
イギリスでは、妊娠41週を超える場合に分娩誘発が行われます。

妊娠41週以降は「予定日超過」で妊娠糖尿病じゃなくても誘発するから、あまり特別じゃない。
日本でも、赤ちゃんが元気かを注意深く見ながら、陣痛がくるのを待つ施設もたくさんあり、分娩誘発と自然待機と、どちらが良いという結論はでていません。
出産
出産中はどちらの国でも定期的に血糖値を測り、ちょうど良い血糖値になるようにブドウ糖やインスリンの注射をしてもらいます。
赤ちゃんが大きくて、「頭は出てきたけど肩がでない」という場合は、
足は開いたまま胸に膝を付けるような体勢になると出やすくなります。
頭の片隅に入れておくと、助産師さんに指示された時にあわてなくてすむかもしれません。もちろん忘れて大丈夫です。
産後は、すぐに「インスリンが働きにくくなっている状態」ではなくなるので、日本ではすぐにインスリンを減量か中止、イギリスではすぐに血糖を下げる治療は中止されます。
赤ちゃんは?
赤ちゃんは産後低血糖や呼吸障害を起こしやすいので、元気かチェックしてもらいます。
産後24時間以内に退院となることの多いイギリスでも、妊娠糖尿病の場合は、最低でも産後24時間は病院で赤ちゃんを見てもらえるようです。

まだ母乳があまり出てない期間は、家じゃ低血糖になってないか心配になっちゃうから、病院で安心。
お母さんは、日本では産後6〜8週で75gOGTT、イギリスでは産後6週で空腹時血糖値を測定し、糖尿病でない事を確認します。
問題なくても、イギリスでは年に1回血糖値を調べるように勧められます。

将来糖尿病になりやすいタイプなので、食生活に気をつけてくださいね。
まとめ
イギリスでの妊娠糖尿病の検査と治療について、日本と比較しながらまとめてみました。
血糖値の管理をアプリを使って受診回数を少なくしているあたり、イギリスらしい工夫だと思います。

この血糖値大丈夫かしら?
って心配になる妊婦さんは日本でも多いでしょうから、血糖値を入力して、病院を受診すべき時には連絡がくるようなシステム、日本にもあると便利だなあ、なんて思いました。